第20話 怜との日曜日①
その翌日の日曜日。
すなわち怜と遊ぶ日である。
「……死にたい」
なんだけど、俺の頭の中は昨日の呱々原さんとのやり取りでいっぱいだった。
完全にやらかした。終わった。
〇INEも全然無反応だし。
絶望的な心境でも、時間は待ってはくれない。
家のインターホンが鳴った。
部屋に入ってきたのは怜である。
「日向行こうよ。……何でベッドで横たわって死にかけてるの?」
「そ、そんな事ないよ!」
せっかく怜と遊ぶのに暗い話を持ち込みたくない。
というのは建前で、なんかダサくて格好悪いので普通の感じを装う俺。
ベッドから上体を起こして怜の服を観察する。
「あれ? 今日の服随分とお洒落じゃない?」
「そうかな? 大分カジュアル目だけどね」
「カジュ、なんだって?」
怜の解説によると、グレーのクロップドフーディーに黒のプリーツスカートを合わせ、小さな黒のバックパックで仕上げた、カジュアルでスポーティーな服装との事。
正直横文字が多くて何言ってるか分からなかった。
今日の俺? 乾いてるシャツとズボンだよ。
幼馴染だし、服装に今更見栄を張る必要はない。
「ん? ちょっとはマシな服持ってるんだね。買ったの?」
怜が俺の脱ぎ散らかした昨日の服を見てそんなことを聞いてくる。
呱々原さんとデートするから気合入れて買いましたとか恥ずかしくて言えない。
あと正直呱々原さんとのやり取りを思い出すから見たくないんだけど。
「そ、そうなんだよ」
「ならこれ着て行けばいいじゃん」
「……」
と言う事で、俺達は街へと繰り出した。
■■■
街についた俺達はデパートに入って、怜の目当ての品物を物色する。
アクセサリーやマスコットキャラクターのグッズを漁っている怜。
その隣で俺が覗いていると、怜が口を開いた。
「僕がこういうのを漁るのは意外かい?」
「以前こういうの興味なかったじゃん」
「まあね。でも友達に進められると意外と悪くない事に気付いてね」
ちょっと遊ばなくなっただけで、こんなに価値観が変わったんだなと思う。
そもそもド陰キャとド陽キャだからね。
呱々原さんもこういうの好きなのかな。
……。
ぐああああああああああああああ!!!!
彼女の事を考えた瞬間、昨日のやり取りがフラッシュバックしてくる。
どうしよう!! いや駄目だって!
せっかく怜と遊んでるんだから一回忘れないと!
「……そろそろ映画の時間だね」
俺の様子を眺めていた怜が淡々とそう告げた。
俺達は予約していた映画館へと向かう。
そう、昨日に引き続き今日も映画である。
観るのは恋愛もので、過去の戦時中にタイムスリップした女子高生が、その時代の兵士と恋に落ちる的な話である。
人によってこんなに見る映画のジャンル変わるんだなと思った。
正直怜の事は兄妹みたいに思ってるから、こういう映画を観る事に抵抗を持ってたんだけど、見ていると意外と面白かった。
隣の怜は、この映画を観てどう思っているのか。
映画を観終わった後は、ファミレス店で一旦落ち着く俺達。
「何かあったのかい?」
映画の話題を話す前に、怜がそう切り出してきた。
「え? 何で?」
「今日ずっと上の空だったじゃないか」
言われて、今日はずっと頭の片隅に呱々原さんがいたことを思い出す。
怜との遊びに専念しようと思って、言わなかったんだけど。
「夜奈ちゃんの事かい?」
やっぱり怜に隠し事はできなかった。
俺は怜に、呱々原さんとの別れ間際の出来事を話したのだった。
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