タバコの香り

第4話

無機質な携帯音に目を細めながらアラームを止めた。





懐かしいような夢を見ていた気がする。





一服しようとタバコを出すと夢の内容を思い出した。






「なーにしてるの。」隣にいる男は後ろから私に抱きついてくると横から顔を覗かせた。





「別に……昔のこと。火ついてるから危ないよ。」私がそう言うと彼は頬を膨らませながら手を緩ませた。









「じゃあ、帰るね。」


一服を終えると散らばっている服を集めて着ると、半裸の彼に手を振った。






「早いよ、みなみちゃん。」彼はやっぱりしゅんとしてる。




私は子犬のような彼に微笑みかけ「またね。」と言って部屋を出た。




彼とはもう潮時かな。そんなことを考えながら家に帰る。今日は仕事はないし、家でダラダラするだけだ。





家の扉は当然のように開いている。当たり前だ。この家には私以外の人も住んでいるのだから。






「お帰り、待ってたよ。」その男は私に微笑みかける。





「…そ。」私は彼を横目に見て、着替えるために自室へと向かう。





「みなみ、これってなに?」そう言われて指さされたのは首だった。





「見てわからない?キスマーク。」私は淡々とそう答える。




「僕への当てつけ?」そう言ってきた彼は怒っている様子ではなく笑っている。私は彼の方を見つめると「そうよ。嫌なら離婚届に署名してくれてもいいけど。」そう言ったが、彼は笑って私の部屋から出て行った。




私の部屋は嫌になるくらい広い。




私は椅子に座るとタバコを出した。部屋に匂いがつこうが構わない。

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