第32話

暴れる私を押さえつけるように、私の手首をつかみ続けたまま、ベットの上へと沈ませた煌は、「⋯やっば⋯」と、小さく呟き。



「は、なして⋯っ、痛いっ―――」


「答えろよ、どうだった?」


「気持ち悪かった!気持ち悪っ⋯ッ!」



私に馬乗りになり、手首を掴んだまま私の顔の横に押さえつけ、無理矢理のキスに私ずっと暴れ続けていた。


嫌だからではなく、痛みから逃れるために暴れているのに。


ぬるりとさっきと同じように強引に舌が入ってくる。もう血の味はしないものの、深すぎるキスから逃れようと必死に舌を逃がすけれど。


それは許してくれず。



煌の舌に絡め取られた瞬間、私は目を見開いた。舌に走る激痛―――



「んー!!んんッ―――」



瞬く間に広がる血の香り。

痛い痛い痛い痛いっ!



私の舌を噛んだこの男は、まだ私の舌と合わせ続けていて。切れた部分と、煌の舌が触れ合う瞬間が痛くて仕方がない。


それも加えて、手首に走る激痛が、私の思考を鈍らせていく。

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