第31話

「さっきの、どうだった?」


「⋯え?」



さっきの?

さっきのとは⋯。



「俺の血、なめただろ?」



なめた?

それって、歯を立ててしまって、舌から出た出血のこと?


首元に置かれていた指先が、私の左手首へと進む。赤く腫れ上がった手首を包み込むように優しくふれ。



「どうだった?」



どうだったと言われても⋯。

鉄の香りがして、気持ち悪くて⋯。



「なあ、どうだった?」


「―――ッ!!?」



包み込むように優しくふれていたはずなのに、ありえないぐらい、強い力で私手首を握りしめてきた煌に、一瞬、言葉を失った。


痛すぎるそれに、私は「痛い」という単語を出しながら悲鳴をあげた。


必死に煌の手から逃れようとするけど、ずっとギシギシと骨がなるほど掴まれている手は離れてくれず。

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