第11話

「―――下は?」



下?名前の方?

言えば、この行為をやめてくれる?

本当に?



「ひ、なた⋯」


声が、震えた。

聞こえているかも分からない。それほど小さくて弱々しい声だった。



「陽向⋯?」


何かを考え、思い出すように「笹本陽向⋯」と、フルネームを呟き。



「―――ああ、思い出した」



またニコニコと笑いだした世那に、「知ってる女?」と璃久が言う。



「うん。あー、そうだ。仁、呼び戻さないとね」



呼び戻す?さっきの人を?

首を閉めてきたあの人を?

なんで?

どうして?



「仁なら、可愛がってくれると思うよ?」



そう言って、私との約束をやぶり律動を開始した世那は、また私に痛みを与えてきて。


悲鳴をあげる私に、世那はニコニコと笑っていた。楽しそうに、まるで私をオモチャのように弄ぶその姿は、悪魔のような姿だった。

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