第30話

今日は本屋でのバイトだ。





古本屋は平日はあまり人が来ない。ぼーっと本を読みながら店番をしている。





「あ…」この間、洋に借りた本があった。




「早く読んで返さなきゃ…」家に帰ったら読もう。この場で読もうかと思ったけど、洋に借りた本を読みたかった。





同じ本なのに、なぜかは分からないけど、違うもののように感じた。




バイトを終えて家に帰る。





この時間は最近ずっとママは仕事だ。





鍵を回すと、鍵は開いていた。ママが閉め忘れたのかと思って中に入った。




部屋の中はシンとしていて、いつもと違う気がした。




お風呂に入ろうと思って着替えをもち脱衣所に向かった。




なんか、真っ暗な風呂場から、シャワーの音がした。




「ママ…?」ゆっくりと扉を開けるとだらりと座り込んだ何かがシャワーに打たれていた。





左手を浴室に入れている。





電気を付けると、ママの姿があった。





目は瞑っていて、お湯を溜めている浴槽は真っ赤に染まっていた。





「……ママ?」シャワーを止めてママの身体を揺すると固く冷たい体はゴトっといって床に倒れた。





「どうしよ……」訳もわからなくなった瞬間リカに「何かあったら連絡して。」と言われたことを思い出した。




でも、この時間は仕事だ。震える手で電話を掛けたのは洋だった。





「どうした?」ママに伝えることを言っていたため、何かあったのかと思って心配しているような声色だ。




「血が……血でいっぱいなんだけど…どうしよう」私は訳のわからないままそう伝えた。





「リン、何かされたのか?今から向かう。やばそうなら救急車呼ぶけど。「私じゃない。ママが……浴室で血だらけで倒れてる。多分、意識ない。」





「今から向かう。」そう言った洋は電話を切った。私はその場で座り込んだまま、ママの手を握った。





久々に触った手は固くて冷たい。





少しして、救急車の音がしてきたと同時にインターンが鳴った。




ガチャと扉が開くと誰かが走ってきた。





「リン!」「洋、ママが動かない。血は止まっているのに、冷たいままなの。」

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