第28話

家に帰るとママとあの男がいた。




「おかえり、鈴」ママの機嫌は相変わらずいい。




でも、目の下にはクマがあって前よりさらに痩せた気がする。




この男が来てから、夜職を始めるようになったせいだ。




「ママ、私昨日この人に襲われた。通帳も取られた。」そう言って、ビリビリに破られた服と下着を見せた。




「…何言ってるの」ママの顔は固まっている。




男の表情は読むことができない。





「そんなことするわけないじゃん。血が繋がっているわけだし。鈴ちゃんの妄想だよ。警戒心丸出しだったし。」沈黙を破ったのは男だった。





「昨日だけじゃない。ここ最近ずっと身体を触られてきた。ママ、この人といてもママだって幸せになれないよ。お願いだから、別れてよ」そう言うと




「俺か、こいつ。どっち信じるの?」男はママは自分を選ぶと思っているようで、自信のある表情だ。





「私、警察に相談するよ。この人、捕まえてもらう。服を破ったこととか、身体を触ったことは証明されなくても、通帳を取ったことはすぐわかるよ。」私がそう言うと、男の目が変わって焦ったような顔をした。






「……やめてよ…」ママは小さな声で言った。






「なんで、私の幸せを壊そうとするの?ずっと望んでいたことなのに。」手で顔を覆い泣き始める。





「お願いだからこれ以上私の幸せを奪わないでよ!」ママはそう言って叫んだ。

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