第26話
洋は学校でも有名だ。
かっこいいって言うのもあるけど、他にも生徒会をやっていたり頭がいいのもある。スポーツもできるらしくて学校で知らない人はいない。
「うちの妹分がこんな目に遭ってるなんて知らなかったんだけど。誰か説明できる?」洋はそう言った。
クラスの人たちは目を逸らした。
香織ちゃんは「あの…!学校に来たら…こうなっていて…今から消そうと思っていたんです。」困った顔でそう言った。
「そっか…じゃあこれは何?」洋が出したのは、携帯で撮った写真。
私の机に落書きしている香織ちゃんたちの写真だった。
「そ…!そんなの…合成です……私たち親友ですよ?そんな酷いこと出来ません。」
「私が撮った写真に文句付けるんだ。てゆうか、可愛がってたあんたがこんな悪事働いてるなんて知らなかったんだけど。」そう言って教室の中に入ってきたのは3年生の女の子先輩。
「先輩!こ…これは…」香織ちゃんはテニス部に所属している。きっとその先輩だ。
「松下に言われて様子見に来たらこんな事してるなんてね。動画もバッチリあるから。言い逃れできないよ。」女の先輩はそう言った。
香織ちゃんは泣き始めた。
「主犯はこの子かもしれないけど、他の人たちも同罪だ。これ以上、この子に手を加えたら、〝鷹村〟が動くから。」洋がそう言った瞬間クラスの人たちの顔が強ばり、香織ちゃんは震え始めた。
「その後始末ちゃんとしといてね。」洋はそう付け足すと、私の手を引き教室を出た。
少し歩いて生徒会室に入る。「私が入ってもいいの?」と聞くと「今日は特別」と洋は笑った。
「ごめんね、私の後輩があんな卑劣なことしてるなんて…」さっきの女の先輩が入ってきた。
「ありがとうございました。」私が頭を下げると「よく言い聞かせとくから。でも、もうしないと思うけどね。〝鷹村〟を出されたら誰も手出しできないよ。」と言った。
さっきから聞く〝鷹村〟って何のことだろう。と思った。
「洋、鷹村って何?」私が聞くと「裕二さんの苗字知らない?」と洋に言われた。
私のことを繁華街でスカウトし、リカさんに紹介した裕二さんのことだ。
私は「知らない。」と答えた。
「あの人、鷹村裕二って言って、昔やんちゃしてた名残で有名なんだよ。アホっぽいけど、怖い人だから。」
裕二さんはたまにお菓子をくれたりする。リカの家にいると突然やってくる。ひょうきんで面白い人。と言うイメージだから、みんなが恐れる意味が分からなかった。
「リンは、知らなくていいよ。あの人リンのこと可愛がってるから、今回の件知ったらクラスのみんな終わるから。」
私が首を傾げると「それだけ怖い人なんだよ。」と洋は答えた。
その後、教室に戻ると私の机の落書きは綺麗に消えていて、花もどかされていた。
もちろん、それからいじめられることはなかった。
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