第28話

「なあ⋯真希。機嫌直せよ」


「⋯」


「俺が可愛いって思うの、真希だけだからな?」



私を抱きしめながら耳元で甘い声を出して言ってくるから⋯。

私のイライラが麻痺してくる⋯。




「⋯言ってたもん⋯」


「なに?」


「外にいる人たち⋯、言ってた⋯」


「なんて?真希に?」



少しだけ声のトーンが低くなった晃貴は、落ち着いて聞いてくる。



「ううん、話してたの聞いただけ⋯」


「なんの話?」


「⋯⋯」


「真希」


「⋯⋯前の彼女は美人だったって聞いた」


「前?」


「晃貴の前の彼女、美人だったんでしょ?」

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