miyuki side

第33話

──御幸side




「晴陽!!!!」


怒鳴り声というか、大きな声を上げたのはつい先程、女が閉じ込められている部屋に行った流雨だった。


何を怒ってんのか。

晴陽の名前を呼び、晴陽の所へ歩くそいつは苛立ったように両腕を組んだ。



さっきまでこいつがいた部屋の中には、女とナナ。





晴陽は顔を動かさず、目線だけを流雨の方にやり。




「ナナ!! いつ辞めさすんだよ?! 早く辞めさろよ!!」



珍しく流雨が、悪い言葉遣いをし。ナナの事で怒っているらしい流雨は、部屋の中で何かを見たらしい。



「どうした?流雨」



俺がそう聞いても、苛立っているらしい流雨は「聞いてんのかよっ」と晴陽に大声を出すのをやめない。




近くでナナの犬が聞いてるっつーのに、何か騒いでんだか。ちらりと霧島を見れば、いつもは無表情のくせに流雨を睨んでおり。



やばいやばい、と、少しだけ心が弾む。




「聞いてるよ」



ため息を出した晴陽に、流雨が舌打ちをした。



「いつ辞めさせんの?」


「流雨」


「仲良くなってさ、族やってる自覚ねぇよ」


「あのな、流雨。お前はあの女をどうしたいの?」


「彼女にするよ」


「お前とナナがやってる事は似てるだろ…。気に入ったから可愛がってるお前と、酷く扱われてるから優しくしてるんだろ?ナナは」


「ナナがいるかぎり月は俺に懐かない」


「お前は4匹目が欲しいからナナを捨てたいのか」


「そうだよ、だから捨ててよ。ナナなんかいらない」

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