第32話
「…でも、」
「頼るんじゃなくて、利用しろ。 ちゃんと一線ひいとけ、そういう半端な気持ちで関わるとお前みたいなやつは直ぐに勘違いする」
勘違い…、
頼るではなく、利用…。
「だから俺の事も利用してる、って思えばいい。分かったな」
分かった、分かってない。
じゃあどうすればいいの?
「──ここにいる間は、賢くなれ」
賢く、だから、どうやってと思っていた時。ノックも無しにその扉が開かれ。中に入ってきたその大きな黒い瞳を持っている男に体がビク、っと反応した。
とっさに、ユウリの体の影に隠れてしまい。
その光景を見て、──流雨の目が細くなるのを私は気づけず。
「ナナ、出ていけよ。その子は俺の」
そう呟いた流雨の声は低く。また昨日とさっきのことを思い出した私の体の震えは止まらなかった。
「流雨」
「あ?」
「さっき、こいつがおにぎり食べたいって言ってたぞ」
ユウリが振り向き、流雨にそう言って。何のことか分からない私は、ユウリを見上げた。
「…おにぎり?」
「ああ、お前が買ってきたものが食べたいらしい。な?」
〝な?〟の時、ユウリは私の方を見た。何が何だか分からないけど、恐る恐る、頷く。
おにぎりって何の話?
けど、それを聞いた流雨が「俺が買ってきたおにぎり食べたいの?」と可愛らしく顔を傾け。
うん、うん、と、慌てて頷けば、ニッコリとした流雨がそこにいて。
「わかった、買ってきてあげる」と、その部屋から出ていく流雨に安心のため息をついた、とき、
「分かったか?」と、ユウリの漆黒の瞳が私を見下ろした。
分かったか?
何を?
「あいつはお前を気に入ってる。だからお願いすれば言うことを聞いてくれる。──そういう所、頭使って回避しろ。今みたいに」
今みたいに…?
「流雨にしかさわられたくないって媚び売れば、あいつは絶対他の男にはさわらせない」
「…」
「そうやって頭使って、俺がいない時は自分で身を守れ」
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