runa side

第29話

──月side



逃げても逃げてもその人は絡ませてきた。

舌を手前にひいても、強く吸われ彼の口内へと入ってしまう。無我夢中に、私の舌と唇を欲しがる動きは止まらなかった。



「んっ、〜〜っ…ん、」



人生初めてキスをされ。

息の仕方も分からず。

何分、何十分、何時間か分からない。


はぁ、と、角度を変える隙を見計らって大きく息を吸えば舌が入ってくる。

苦しくて苦しくて呼吸が出来なくて。

流雨の体を押すけど無駄で、私の顔を鷲掴んでいる手はピクリとも動かず。

かわりに服をつかもうとするけど、酸素不足で指先が震えだしもうどうにもならなかった。



彼…、流雨は1人、2人、3人とこの部屋に誰かがやって来てもキスを止めない。


4人目の人が現れて唇を解放され、大きく息を吸った。






ユウリ…という男のおかけで部屋に戻ることが出来て、呼吸を整える。まだ苦しい、まだ熱い、私の口内があの人の唾液ばかりで。



きもちわるい、きもちわるい、とポロポロ涙を流しながら頑張って手の甲で唇をふいた。それでも感覚は消えてくれない…。



なんで、なんで、どうなってるの、思っていた時、さっき部屋を出たはずの彼が戻ってきて。



ベットに腰かけて泣いていた私の肩が、びく、と動いた。




さらさらとした黒い髪を揺らしながら、私に近づき、「…大丈夫か」と眉を寄せ、少しだけ身を屈め顔を覗き込んでくる人…。



ユウリ…。


ナナワタリユウリ。




「くちびる、」



私の顔を見て、そう言った男はゆっくりと手を伸ばしてくる。さっきまでずっとキスされていたそこに指先を軽く当てたユウリは、「腫れてんな、」とそこをなぞった。



「っ、」


「痛いか? こういうの冷やす方がいいのか?」


「…っ、」


「なんとなく話聞いたけど、お前、ザリガニ好きなのか?」



好きなわけない、

ただ、自由研究でした、だけで。

好きとか、そういうのじゃ…。



ふるふる、と、首を横にふれば。「そうか」と呟いたユウリは私の唇から指先を離した。

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