第26話

女を部屋にやり、「霧島」とそいつの名前を呼べば、霧島は俺の方に来る。3人に聞こえないように、こっそり。



「なんで止めない?」と聞いても「殴られてはない」と見当違いの事を言う。



「流雨…あれなんだ、 どうした?4匹目って?」



呆れたようにそう言った俺に「あの女が…」と霧島は続けた。あの女が?



「あの女が、3匹を…褒めたというか。ザリガニのこと結構知ってて。それを流雨が気に入った。だからあんな風になってる」



褒めた?

結構知ってた?

媚びを売れと確かに言ったけど…。

流雨に気にいられた?

あの女が?


なんだそれは、ああ、だから〝4匹目〟かと納得し。


あのキモいザリガニみたいに可愛がってるって事な。息苦しいキスをするほど。


いや、ザリガニと人間を同等に扱うっていうのもどうかしてると思うけど。



「…もうひでぇ扱いはしないってことか…」



ザリガニのように、可愛がる。



「多分、そういう事」


「分かった」


「ナナ…」


「酷い扱いじゃなくても、苦しそうだったろ。お前も助けてやれ、怖がってるの分かるだろ…」


「ナナがそう言うなら…」


「1週間後に彼女だって? アイツ自分の女にするつもりなのか…」


「…そう言ってる」




女を〝便器〟扱いか。



それとも、



愛される方がいいのか。




──…流雨の性格は、よく分かってる。



あいつがもし、女にしたのなら、ザリガニのようにきっとどこかに閉じ込めるだろう。


どこへも行けないように。



強欲のあいつは、人一倍、独占欲が強いのだから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る