第30話
──────
……それは何年も前のこと。
1人の女の子がいた。
その子はあまり、家庭環境が良くなかった。
毒親。
ネグレクト。
放任主義。
言葉にすると、こんな感じで。
家にいたくない女の子は、夜の街に繰り出した。
その街で1人の男と出会う。
男はホストをしており、出会ったのはキャッチというもので女の子に話しかけたのがきっかけだった。
ホストは泣いている女の子の慰め、その一晩で女の子の心を開かせてしまう。
そして男の元へ、女の子は通うようになる。ホストクラブへ。お客様として。
ここでは毒親もいない、自分の世界を作れる御伽噺のような感覚で。
男へ会いに来るこの瞬間こそが、女の子にとっては心の安らぎだった。
けれども、お金はつきる。
どれだけ働いても、すぐにそのお金はホストクラブへと消えてしまう…。
女の子は体を売るようになった。
男に会うために。
自分の世界を壊さないために…。
「来月のクリスマスイベ、これる?」
「うん、来れるよ」
「いくらぐらい使える?」
「200万ぐらいかな…、たりない?」
「いや、多いぐらいだよ。嬉しいよ。俺のためにありがとう」
抱き寄せてくるホストに、女の子は心の中で思う。本当は200万なんて、クリスマスイベントでは下の方。500万ぐらい使う人もいる。何千万払う人だって…。
女の子はホストを振り向かせようと必死だった。もっとお金を使えば、褒めてくれるんじゃないか。
私を見てくれるんじゃないか…。
抱きしめてくるんじゃないか。
女の子は家族の温かみを知らなかったぶん、恋をしたホストに温かみを求めていた。
お金を使わなきゃ…。
そう思った女の子は、クリスマスイベントの前日、お金を借りてしまった。
あまりお金を借りるということを知らなかった女の子は、たくさんお金を借りるところがあるというのに、よりにもよって〝闇金〟という地獄に手を出してしまった。
そこから、女の子の借金地獄は始まってしまった…。
元々働いていた夜の店から、女の子は別のお店に行くことになった。
前の店とは違い、ボロボロになって働いている時、女の子は知ってしまう。
恋をしていたホストがホストクラブをやめ、結婚したことを。
そしてある日の夜、女の子は身を投げた。
まだ19歳の女の子だった…。
その女の子の亡骸を見て、とある男は涙を流したらしい。
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