③
第28話
昨日と今日で、変わったことが2つある。
1つはタカが部屋の中に来なくなったこと。ケイシによって怪我をおったタカは、動けないのかもしれず。
その代わりにケイシが来るようになった。
タカと違いケイシはおにぎりを持ってきた。コンビニやスーパーで用意されたおにぎりだと思うけど、目が見えない私は手探りで袋をむくことしかできず…。
上手くむけない私に、ケイシが呆れたように「貸せ」とむいてくれた。
久しぶりのお米は、やけに甘かった。
もう1つ変わったことは、私の視界の中からモヤが無くなったこと…。また現れた真っ暗闇。
医者らしい人が「また戻ってます、見えていません」と言っていた…。
ケイシは「あいつと会えないからか?随分、都合のいい目だな」と冷たく笑っていた。
柚李と会えなくなってしまったから…。
精神的にくる、視界の悪さ。
柚李と会っていた時はモヤがかかり回復していたのにと。
視力は良くならなかった。柚李の会わなくなって何日経ったのか分からない。
朝か夜か分からない私にとって、日付なんて分かるわけない。
分かってくるのは、この部屋に来る誰かの足音。
だから、ケイシでもなく、タカでもない人がこの部屋に近づいてくるのがわかった。
あまり足音がない人。
私は扉の方へと顔を向けた。
コンコンとノックをされあと、外から扉が開けられる。
誰か分からない私はその扉を見つめた。足音からして、多分1人。
じ…と、暗闇の中その方向に見つめていると、扉が閉まるような音がして。その人が中へと入ってくる。
床に座り込んでいる私の側まで来たその人は、「お前が、最近ケイシが連れてきた女か?」と、呟いた。
その声は、低く。
だけどどこか枯れていて、渋い。
40…歳ほどか。
それでもどこか、声の低さが柚李に似ているような気がして。
誰だろう…。
タカは?ケイシは…。
男性の質問に、小さく頷けば。
「柚李のことを気に入ってるのか?」
と、突然ユウリの名前を出してきて。
心の中がビクッと鳴る。
ゆうり…。
「どうなんだ?」
その声は、やっぱり低い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます