第28話

昨日と今日で、変わったことが2つある。


1つはタカが部屋の中に来なくなったこと。ケイシによって怪我をおったタカは、動けないのかもしれず。


その代わりにケイシが来るようになった。


タカと違いケイシはおにぎりを持ってきた。コンビニやスーパーで用意されたおにぎりだと思うけど、目が見えない私は手探りで袋をむくことしかできず…。


上手くむけない私に、ケイシが呆れたように「貸せ」とむいてくれた。


久しぶりのお米は、やけに甘かった。






もう1つ変わったことは、私の視界の中からモヤが無くなったこと…。また現れた真っ暗闇。


医者らしい人が「また戻ってます、見えていません」と言っていた…。



ケイシは「あいつと会えないからか?随分、都合のいい目だな」と冷たく笑っていた。



柚李と会えなくなってしまったから…。

精神的にくる、視界の悪さ。

柚李と会っていた時はモヤがかかり回復していたのにと。








視力は良くならなかった。柚李の会わなくなって何日経ったのか分からない。

朝か夜か分からない私にとって、日付なんて分かるわけない。


分かってくるのは、この部屋に来る誰かの足音。



だから、ケイシでもなく、タカでもない人がこの部屋に近づいてくるのがわかった。


あまり足音がない人。


私は扉の方へと顔を向けた。


コンコンとノックをされあと、外から扉が開けられる。


誰か分からない私はその扉を見つめた。足音からして、多分1人。



じ…と、暗闇の中その方向に見つめていると、扉が閉まるような音がして。その人が中へと入ってくる。



床に座り込んでいる私の側まで来たその人は、「お前が、最近ケイシが連れてきた女か?」と、呟いた。



その声は、低く。

だけどどこか枯れていて、渋い。

40…歳ほどか。

それでもどこか、声の低さが柚李に似ているような気がして。



誰だろう…。

タカは?ケイシは…。



男性の質問に、小さく頷けば。



「柚李のことを気に入ってるのか?」



と、突然ユウリの名前を出してきて。

心の中がビクッと鳴る。


ゆうり…。



「どうなんだ?」




その声は、やっぱり低い。

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