第29話

矢島君の紙を見ながら、高校時代の私を思い出していた。私もずっと、紙をかけなかった。

ずっとずっと迷って、空白のままで。



ああ、そうだと思った時には、矢島君に怒鳴ったことを後悔した。



私もそうだったと。

名前だけを書いて、他は空白のまま、当時の担任の先生に提出したじゃない⋯と。

そこで熱心に聞いてくれた先生みたいになりたいから、大学に進んだのに。




来ないと思ってた。

けど、綺麗な顔をしているのに、すごくだるそうにしている矢島君が、決められた時間に教室へやってきた。




気持ちを切り替えようと思った。


いつまでもため息を出してはダメだと。

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