第30話

「あー、言ってたよ。近づくなって」



近づくな?

逆らうなではなくて?



「その人、やばいんだって。聖さん達は一個上で、高島良は私らと同い年だけど、狂ったように喧嘩してるらしい。女の子でも容赦ないって」


「⋯」


「遥も、絶対に近づかない方がいいよ。裕太くんの女って言っても、高島良には関係ないらしいから」


「⋯そうなんだ⋯」


「聖さん達と、高島良が昔からの幼なじみなんだって。だから仲良いみたいだけど。チラホラそういう声は上がってるらしい」


「⋯声?」


「やりすぎだって」


「やりすぎ?」


「暴君すぎってこと。みんな高島良が歩けば、直ぐに道をあけるらしいよ。自分に被害がないように」


「⋯」


「でも、他校から守ってるのは高島良に変わりはないから。みんな1目置いてるって。何だかんだ頼れる存在だとか⋯」


「⋯」


「でも、暴力する相手に見境がないって、どうかと思うけどね」


「⋯⋯だね」





莉子の会話を聞きながら、私は約1年前のことを思い出していた。

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