第28話
私の中では五分後だったはずのバスは、1分足らずで到着した。
「気ぃつけて帰れよ」
バスが来るまで、待っててくれた薫。
────いい子よ、薫ちゃん
おばあちゃんの言葉を思い出す。
外見から見ては分かりづらいけれど、いい人なんだと思う。
「またね、薫」
呼び捨てで呼んだことに対して、薫はどう思っているだろう。
片腕を軽く上げる薫を背に、私はバスに乗り込んだ。
今日のバスの中は、いつもより人が少ない気がした。
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