第5話
「あ、あの···」
近寄ってくる男に、軽くパニックになってしまう。
「乗れよ。お前んとこの2人には世話になってるから」
2人って、おばあちゃんとおじいちゃんの事だよね?
世話?世話って?
「後から来いよ〜」
考えている最中にチャリンチャリンとベルを鳴らしながら、聖という友はその場から離れた。ここにいるのは薫と私だけで。
「世話って···」
「つーか、時間ねぇから早くしてほしい」
「え?」
その時、薫の手がゆっくりと私の手に伸びてきた。自然とびくつく私の体。その手で持っている私の鞄を取り上げた薫は、自転車の方へと戻っていく。
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