第29話
「そう、瀬尾頼の恋人、河村百合。その子の首を絞めて殺したのは魁輝じゃなかった」
―――魁輝じゃ、なかった?
「ど、どういうこと⋯?」
だって。私は。
私が監禁されたのは⋯頼の復讐なのに。
「殺したのは、別の男」
「別⋯?」
「あの建物の中で。恋人で、首を絞める。 陽向、陽向なら分かるはずだよ」
あの建物の中?
恋人?
首を絞める?
私なら、分かる?
分かる⋯?
分かる。
分かるよ?
すぐに、分かってしまった。
「⋯⋯冗談、やめてよ」
「陽向」
「だ、だって⋯、そんな」
「河村百合を殺したのは、仁だったんだよ」
頼の好きな人は、寝取られたのだ。
恋人だった。
行為をしたあと、殺した。首を絞めて。
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