第31話

少しだけ違和感があった。

私が流雨が嫌で嫌で助けを求めた日。私は晴陽に言った。

流雨が嫌だって。

送りも柚李がいいって。

護衛も嫌だって言ったし、陰口も。



色々な事を頭に思い浮かべながら「今日もかわいいね」と言ってくる流雨のキスを頬で受け止めていた。



いつの間にか晴陽も戻ってきてたし、柚李も来ていた。御幸は「帰るね〜」と私に嫌味だけを残し姿を消した。



「今日も顔色悪いね、キスはやめておいたほうがいいかな?」



そう言って、流雨の細い指先が、私の唇をなぞる…。その指先にいつもなら悪寒がするけど、もう別の事を考えていた私は、〝彼〟のことを考えていた。



その人ら煙草を吸いながら、今日はスマホで動画を見ていた。どうでも良さそうに、何も考えていない顔をしているのに。

晴陽の頭は、どうなっているの…?



「月のほっぺた、柔らかくて好き…あ、ほっぺただけじゃないよ?俺は月の全部が好き」



ぎゅう、と、私を抱きしめる流雨…。

その流雨越しで私は柚李を見た。柚李はスマホをさわったいた。


誰かと連絡をとっているんだろうか?


私のせいで、大好きな弟と遊べない柚李…。

女の子と遊ぶからと、送りたくない御幸…。

憧れているから、私を護衛したいという2人。

私を気に入っている流雨…。

そして──…



「俺ほんとに月がいないと死んじゃうかもしれない…」



その場しのぎで、行動していない晴陽…。





だとしたら。




この人の目的は、何?




晴陽は、どうして…私を?




「まだ、体調…悪いから、ずっと抱きしめてて…」




流雨の扱いが上手くなった私は、キスをしなくて済む方法を分かってた…。

ずっと抱きしめられるだけなら、深い行為もしてこない…。




「ほんとかわいい、天使なの?」




うっとりとした流雨は、今日も私に甘い言葉を吐き続ける…。

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