第28話

「や、本当にこんなことを〝姫〟の月さんに言うのは失礼と思うんですけど、2人の方がいいと思います!月さんの安全を考えたら…」



──…次の日、一人だったはずの護衛が、2人いた。宮本くんと、富木とのきくん。その2人がまるで説得するように、そんなことをう。



そこは教室の中だった。

休み時間。

生徒はいる。



「俺も昨日ミヤから聞いて、そっちの方がいいと思います…」


「ほら、あの、トノもそう言ってますし…」


「族のこと、何も知らないみたいだから…」



2人の方がいい。

攻めと守り…。

だから何から護衛するか未だに分かっていない私は、口を閉ざすしか出来ないけど。



何も知らない。

確かに私は、教えて貰うだけで何も知らない。



「だめですか?」


「ほんとに迷惑とかじゃないです」


「俺らが守りたいだけなんで!」


「お願いします」


「〝月〟さんに何かあれば、俺らの首が飛ぶのも確かなんです…!」


「どうか2人で…」




教室の中、ちらちらと私たち3人を見つめてくる視線。その視線は〝尊敬〟や〝憧れ〟とかじゃなかった。



見張られるのが嫌なはずなのに。その視線と、2人の口説きに「…分かりました…お願いします…」と、耐えきれず言ってしまった。





教室のどこかで、「……何アレ」と、小さな声が聞こえた。

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