第29話

――side柊—―



はぁ、つまらない。朔が薫に似た女がいるとかいうから来たのに。

えっとー、九条香澄?だっけ


何か隠してる雰囲気はあるものの、薫とは全然雰囲気が違う。


「はぁ、まじでどーでもいい」


どうでもいいよ、薫以外の人間について考えるなんて。



俺が廊下を歩いていた時、足早に九条香澄が通り過ぎて行った。


行く先は俺と同じなようで、人通りが少ない場所にある教室だった。



「—―はい、どうした」



教室から聞こえてきたのは、男の声だった。


おかしい、確かにあいつが入るのを見たのに。なんで男の声が聞こえるんだ。



「…律の場所がわかった?了解すぐ向かう」



――「薫さんも気を付けてください」



電話をしている相手からそんな声が聞こえた。薫?まさか、闇來…!



人が出てくる音が聞こえて物陰に隠れると、九条香澄がその部屋から出てきて足早に去って行った。



「あははっ、そういうことか。…見つけたよ、ようやく。俺の薫を」



ようやくだ、変装して今度は何をしてるのかなぁ。でもなんでもいいや。


早く俺のところに、俺のものに…。



俺は急いで律の監視をしている奴に電話をかける。



「—―薫を見つけたよ、律?だっけ。そいつのところに向かうよ」



俺はいつになく上機嫌で教室に戻った。

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