第28話

売り言葉に買い言葉で思わず素が出ちゃった。


気づいた時にはもう遅くて……思いっきり2人は引いていた。



「やけに仲良いね。2人って……」


「いや私たちはただの………」


「腐れ縁ってやつですよ。俺たち幼馴染なんで」



2人の驚いた声が木霊した。




この状況非常にまずい。


幼馴染ってバレちゃったじゃん。


成美に好きな人が賢人だってバレたかも。



化粧室でメイク直しをしていた。



けど、口ではあんなこと言っても本音はやっぱり嬉しい。


賢人とまたこうして話せることが。


昔みたいに喧嘩みたいなノリで言い合いしていることが。


だから、賢人に会いたくなかった。


この気持ちを思い出してしまうから。


好きな気持ちが蘇ってしまうから。


こんな気持ちになりたくなかった。


賢人がまだ好きだって自覚するのが怖かったんだ。




トイレの入口前には佇む賢人がいた。



「何してんの、賢人…」

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