第34話

俺達が視察するクラブのVIPルームに到着した辺りで、スマホに連絡が来た。



目的の奴等を確保して尋問中だと。



尋問ねぇ...あの真紅のバイクの事も詳しく分かるんじゃねぇ?



俺も参加しちゃおうじゃねぇのよ。




店のNo持ちがそれぞれ俺達の横に付き従う中、俺は一人立ち上がる。



「紅葉、俺抜けて良い?」


と言ったら、



「ああ"?」


感情のない表情で睨まれ。



「さっきの連中、拘束したらしい。今、尋問中らしくてよ、俺も参加してぇ」


嘘をついても仕方ねぇから本当の事を話した。



「...分かった」


それだけ言うと、煙草を銜えて火を着けた紅葉。



「行くなら、それなりの情報を持ってきてくださいよ」


美智瑠が紅葉に変わって指示を出す。



「ああ。そのつもり」


俺はニヤリと口角を上げる。



「何々?なんのことですか?」


紅葉の隣に座る女が紅葉の腕に胸を押し付けるように抱き着いて、上目使いで紅葉を見る。



「.....」


ま、もちろん、紅葉は答えたりしねぇけど。




「謙吾さん、もう行っちゃうんですか?アフター楽しみにしてたのにぃ」


俺の隣の女が俺の腕を掴んで上目使いに見上げる。


この店でNo.2の女の誘いは確かに魅力的だけど。



今優先したいのはあのバイクの彼女なんだよなぁ。


だから、悪いけど。



俺を掴んでいた手をそっと外してにっこり笑う。



「ごめんね?君と一夜を過ごすより、もっと魅力的な事が待ってんだよね」


悪いけど、と手を振って彼女の元を離れる。



悲しそうな顔で俯いたけど、本当は断られた悔しさに苛立ってるよね?



ここの高級クラブのNo.3まではプライドの高い事で有名だからね。



ま、どうでも良いけど。





「じゃ、行ってくるわ。後は後ゆっくり」


紅葉と美智瑠にひらりと手を振ってVIPルームを出た。


背中に刺さる視線なんて気にならない。



今の俺は、未だかつてないほどワクワクしてるからね。






さぁ教えて貰おうか。


真紅のバイクを操るあの彼女の事を。




チラチラ向けられる視線を全て無視して上機嫌のまま、クラブを後にした。







 ̄ ̄ ̄ ̄

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

謙吾side

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