第33話

「いやぁ~格好いい運転する子だったじゃねぇのよ?」


さっきみた真紅のNINJAの余韻に浸りながら、正面をぼんやりと見つめて吐き出した。



「確かに、運転技術は凄いものでしたね。相当乗りなれているのか、愛車を心底信頼しているのか。どちらにしても思いきった運転でした」


美智瑠がこんなに人を褒めんのなんて滅多に無くね?


ま、それほどまでに、あの子は凄かったって事だな。



遠ざかるエンジン音を聞きたくて喧騒の中で耳を済ましていると、耳障りなエンジン音が響いてきた。



ガリガリ、バリバリうるせぇ。


さっきのバイクとは大違いの連中が、どうやら登場したらしい。



眉を寄せた俺に、


「どうやら、彼女はゲス達に追われていたみたいですね」 


と美智瑠が言う。



「ああ、どうやらそうらしい」


振り返った視界に写った数台の族車を睨み付けた。



帝王の統べる街に無遠慮に乗り込んできたクズどもに苛立ちが湧く。




「.....」


殺気を静かに垂れ流した紅葉が振り返って俺を見た。



「了解。直ぐに排除する」


礼儀を知らない余所者が大きな顔でこの街を走っていいわきゃねぇんだよ。



くだらねぇチーム旗なんて、偉そうに掲げてんじゃねぇし。



俺はポケットからスマホを取り出すと、目的の人物に電話をかけた。



『はい』


と答えた声に、


「排除だ。この街のルールをしっかりと教えてやって。二度と踏み込んで来ないように」


とだけ告げた。



『了解しました。至急対処します』


「多少手荒な真似もいとわない」


それだけ話して電話を切る。




「今回は何分ぐらいで制圧しますかね?」


と黒い笑みを浮かべた美智瑠に、



「まぁ、あの程度なら10分だろ」


と口角を上げた。



未だ視界に写るのは、改造を施された族車。


見るからに頭の悪そうな連中が運転してるし。



まぁ、彼女の運転ならこんな奴等相手にもならないんだろうな?



俺は目の前を通り過ぎた男達を嘲笑った。




しっかりとこの街のルールを教えてもらえよ?


誰の街でふざけた事をしたのか知ると良い。




数分後にはうちの連中に制圧されて恐怖に包まれるであろう連中に、南無阿弥陀仏と手を合わせてニヤリと笑った。

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