第28話
風に揺れる長い黒髪。
ママが似合うと言うから、裾半分にふんわりとした緩めのパーマをかけてる。
グローブ越しに視界に入った毛先を指に絡めた。
ヘルメットを被ってたせいで、ペッタンコになってる。
バイクって、これが厄介なのよね。
ヘルメットを被るからセットなんてのは意味がない。
ママはそんな私の髪を見て、いつも残念がってた。
だから、たまにセットしてバスに乗ってお見舞いに行ったっけ...。
ママ、元気かな?
まだ離れて数時間だってのに、もう寂しくなってる。
ダメだなぁ~こんなのでやってけるかな?
覚悟を決めたはずなのに、直ぐにグラグラ揺らいでしまう。
まだまだ子供な自分が情けなくなる。
もっと、ずっと、大人だと思っていたのに。
眼下に広がる光の海にもう一度目を向けた時だった。
ブオンブオン....ブロロロ~
聞こえてきたエンジン音にギョッとした。
慌てて振り返ったけど、まだ姿は見えてない。
って言うか、しつこいよぉ。
エンジン音からして追っ手の台数は少なくなってはいるものの、あの煩いだけのエンジン音は奴等に違いないわ。
「面倒臭い」
と呟いて、ヘルメットを被り直した。
伯父さんが言った様にあの街に逃げ込んでしまうしかなさそうだ。
ブオンブオンとエンジンをふかして、アクセルを回した。
ゆっくりと進みだしたバイクをシフトチェンジしながら速度を上げていく。
背後からの追跡者を置き去りにするために、目的の街を目指した。
蛇鬼とはよく言ったもんだわ。
しつこすぎ。
まぁ、泉に何としても捕まえろ!とか言われてるんだろうけど。
悪いけど、私も捕まるつもりはないのよね。
相棒と私に追い付こうなんて100年早いのよ。
口元をクツリと緩めた私はアクセルを全開にあけた。
流れる景色は一気に消えていく。
追い風に押されるように、光の海へと飛び込んだ。
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