第7話

パパは海外出張中に不慮の事故で亡くなった。


パパの乗っていたヘリが山に墜落したんだ。


それが5年前。



元々体の弱かったママは心労で倒れて入院。


それ以来、入退院を繰り返して、今では入院したままだ。



亡くなったパパは結構な額の保険金をかけてくれていたので、私達はやっていけてる。


それに、ヘリの運営会社とパパの会社からの賠償金が出たおかげだ。




体の弱いママと中学生になったばかりの私を心配して、お祖母ちゃんがこの家に引き取ってくれた。


だけど、ここには伯母夫婦と娘が居てママや私は肩身の狭い思いをしていた。


お祖母ちゃんが丈夫な頃は、私達の事を庇ってくれたけど、脳梗塞で倒れてからは体が不自由になりお祖母ちゃんまでもが肩身の狭い思いをしている。


出て行こうとママには何度も言った。



だけど、ママは自分が入院して私が一人になってしまうことを心配して、この家を出ようとしなかった。


だから、私もこの五年間我慢してきた。



伯母さんは私を家政婦みたいに扱い、その娘である同じ年の泉(イズミ)は私を蔑みイジメた。


それにも負けずに中学生を出て、高校も卒業した所で、このくだらない縁談話だ。



さすがに、もう切れた。




「伯母さん。ママと私は生活費もチキンと入れていたし、ママの入院費だって自分達でやって来ました。離れを貸してくださっていたのはありがたかったですが、将来を差し出すほどのお世話になった覚えはありません」


憎々しげに私を睨み付ける伯母さんにキッパリと言い切った。



伯母さんの言いなりのまま、あんなおっさんの所に嫁になんて行くわけない。




「なっ...何を偉そうに。貴女は私の言う通りに動けば良いのよ」


眼を血走らせて必死な伯母さん。



ほんと、頭悪い。



大きな溜め息が出た。




「ママの言う通りにしなさいよ。あんたなんてあのおっさんに玩具にされたら良いのよ」


この母親にしてこの娘ありだな。



肩までの髪を茶髪に染めて、派手なギャルメイクをした狐目の彼女が従姉妹の大森泉(オオモリイズミ)だ。




「...話にならないので、失礼します」


会釈だけして、彼女達に背を向けた。



馬鹿馬鹿しくて話し合いにもならない。



今日はこれからママの病院に行かなきゃいけないんだから。





「ちょっと、待ちなさいよ。話は終わってないわよ」


「あんたは、必ず貝塚さんの所に言ってもらいますからね」


泉と叔母さんのヒステリックな叫び声を聞きながら私は家を飛び出した。

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