第7話

薄暗くなった公園は、凄く寂しい感じがした。


滑り台とジャングルジムとブランコ、そして小さな砂場のあるそこは日中の明るい時には子供達が楽しそうな声を出して遊んでいるんだろう。


公園の中央にポツンと取り残された小さな青いボールが妙に切なさを醸し出していた。



「お母さん達と公園に来た事なんてあったかな?」


なんて思いながら、ジャングルジムへと近付いた。


懐かしさに登ってみたいと思い立った私は、買い物袋を地面に下ろしてジャングルジムによじ登った。


一人でよく公園のジャングルジムで遊んだよね。


高い場所から見れば遠くまで見渡せて、お母さんが迎えに来てくれるんじゃないかといつも待ってた気がする。


帰る時刻になって、他の子達は親が迎えに来てくれて、いつだって私だけが一人残ってた。


あの頃は、他の子が羨ましくて。




「こんなに低かったっけ?」


頂上のポールに腰を下ろして周囲を見渡した。


もっともっと高かった気がしてたのに。


大きくなった分だけ、ジャングルジムが低く感じた。



足をブラブラさせても、昔みたいに楽しくない。


この場所に居るときだけが、全てを支配出来るような気分で居たのになぁ。



結局、私はな~んにも手にしてない。


両親からの愛情も幸せも、何一つ。



「私って、何のために生まれてきたんだろうね?」


小さな頃からずっと疑問に思ってた。


愛されて、望まれて、生まれてきた訳じゃ無さそうだし。


母親が苛立ったように私に話した両親の馴れ初め。


それを聞いてから、ますます生まれてきた意味を見いだせなくなった。



キャリアウーマンの母親と、実家の会社を継いだばかりの父親がその場の勢いで一夜限りの関係をもって、またまた私が出来た。


二人とも結婚の意思はなかったらしいけど、父親の両親が生まれてくる子供の為にと結婚を進めたらしい。


一緒に居れば互いに恋愛感情が生まれてくるだろうと結婚はしてみたものの、二人が思い合う事はなかった。


それでも、夫婦関係を続けてきたのは私の存在があったから。


そして、世間体と言うなの呪縛に縛られていたからだ。



結婚する気が無いなら、子供が出来ないように遊べばいいいのに。


バカな両親に、溜め息が漏れた。



ネグレクト・・・まではいかなくても、私に対して彼らは無関心だった気がする。



「馬鹿馬鹿しい。あの人達に振り回されるなんて、もうごめんだ」


胸の奥の痛みに、私は気付かない振りをする。

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