第27話

3人でやって来た社長室。

正面の窓から差し込むのは、傾いた太陽が織り成すオレンジ色の光。


いつもの様にソファーに座るとブラックノートを開いて三村さんに報告する。


「予約状況はこんな感じです。今日新しく追加された人達はこの3人ですね」

「なるほど。新規の3人についてはこちらで調査します」

「はい」

その日、新しく追加された人と、その人達を含む予約者のスケジュールをこんな風に夕方に報告するのが日課となっていた。

無作為に予約してるように見えて、このブラックノートにはルールがある。


予約を受け付ける時間は、月曜から金曜の19時以降。

そして、1日平均2人まで。

稀に、斎賀コーポレーションに利益があると認識されたご令嬢などは、土日の日中にデートの時間を取ることもあり、そこはケースバイケースだ。


正直、毎日毎日女遊びなんかよくするな、と感心する。

斎賀さんの体力も気力もある意味凄い。


予約した女性全員が体の関係を持ってる訳じゃないけど、ほとんどの人はそれ目的だと思う。

斎賀さんのお眼鏡に叶った人だけがデートの最後にそういう時間を持てるらしい。

不特定多数と遊んでる男のどこが良いのか、まったく分からないや。

確かに稀に見るイケメンだけど、誰かと共有してまで欲しいと思えないな。


「昨日の予約のこの女性ですが、隣街の有力企業のご令嬢ですので、来週末の日曜に変更を連絡しておいてください」

「分かりました」

名前を見て、どんな女性だったか思い出す。

浮世の垢の滲み出てない品のある美人だったよね。

ご令嬢だと言われて納得する。

持ってた鞄も服装も一流ブランドだったし。

この人が帰った後に、伊藤先輩が羨ましいと騒いだので覚えてた。


「ねえねえ、早くおやつ食べよう」

軽く弾んだ声で、スイーツ店の袋から何やら取り出し始める斎賀さん。


いやいや、私、まだ仕事の話してますけど。

ジト目で彼を見てしまうのは仕方ないよね。

斎賀さんの隣に座る三村さんも、呆れ顔で眉根を寄せていた。


「社長、業務の邪魔をしないでください」

棘を含んだ三村さんの叱責も、

「固いこと言うなよ。おやつ食べながら話せるんだし」

軽く受け流す斎賀さん。


この人、本当に自由人だな。

本当に街を統べてるキングなのかと疑ってしまう。

噂じゃ冷徹で冷酷って話なのに、今の斎賀さんからはそんなの想像できない。

まぁ、私が本当の彼を知らないだけなのかも知れないけどさ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る