ブラックノートとの出会い

第9話

閉め忘れたカーテンから差し込む朝日の眩しさにゆっくりと瞼を開けた。


「うあぁ、太陽が目に痛い」

昨日の夜、飲みすぎたせいなのか、寝すぎたせいなのかは分からないけど、とにかく目の奥が痛い。


まだ眠気の取れない目を擦りながら、気だるい体を起こしてベッドに座った。

あ〜駄目だ、顔が浮腫んでる。

腫れぼったい感覚に、小さく息を吐いた。


昨日、歩道橋から大急ぎで帰った私は、出会ったあの美丈夫の事は幻だと思うことにして寝た。

だって、現実だったらおかしいでしょ?


見知らぬ私に、仕事をあげるだとか、絶対おかしい。

飲み過ぎたアルコールが見せた幻に違いないよ。

電話番号を交換した気もしないでも無いが、思い過ごしだと自分に言い聞かせた。


未だに怖くてスマホの電話帳は開いてない。

絶対、ろくでもない事になりそうな予感がするんだもの。


「今、何時だろう」

部屋の掛け時計に目を向けると、時計の針は午前10時を指していた。

仕事がないからって寝過ごし過ぎだなぁ。


まぁ、今日の面接は午後からだから問題ないって言えば問題ないけどさ。

とにかくシャワーでも浴びようと、ベッドから降りた。

足の裏に当たる冷たいフローリングが気持ちいいや。


温ぬるめのシャワーを浴びて、手早く支度を整える。

派手な化粧をしない私の準備はかなり簡単に終わる。


樹には、もう少し化粧をしたらってよく言われるけど。

日焼け止めと眉毛とファンデーションだけで十分なんだよね。


グラスに注いだ珈琲牛乳を飲みながら、チカチカ光ってるスマホを操作すると、メールアプリに樹からの通知が来てた。


[大丈夫? きちんと帰り着いた?]

これは昨日の夜。

[ちょっと、もう起きた? 返事ぐらいよこしなさいよ]

これは、一時間ほど前のものだ。


あちゃ〜心配させちゃってるなぁ。

ごめんごめん、と心で謝りつつ、起きたよ〜と返信すれば、直ぐにスマホが着信を告げた。


「うわっ···と、もしもし」

驚きつつもスマホをタップした。


『ちょっと、今起きたの?』

あ、怒ってる感じの声だ。 


「うん、少し前に起きた。目覚ましかけ忘れて、窓か差し込む太陽の光に起こされたんだよね」

アハハと愛想笑いをすれば、

『はぁ···無事に家に帰ってたなら、もういいわよ』

呆れたように彼女の溜め息が吐き出された。

白い目をした樹の姿が目に浮かぶ。

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