第8話

面白い、何故かそう思った。

俺の周りに集まる女の中にはあんまりいないタイプ。


どう声を掛けようかと考えてると女が叫んだ。


「同情するなら仕事くれー!」と。

いいね、やっぱり面白い。

俺はゆるりと口角を上げる。


この子を側に置いてみるのも一興だな。

ちょうど、任せたい仕事もあるし、うちに引き込もう。


ねぇ、最近さ、凄く退屈してたんだよね。

だから、その退屈を君に解消してもらうおうかな。


俺はゆっくりと距離を詰め、彼女に声を掛ける。


「いいよ。なら、仕事あげる」と。

振り返った彼女の驚いた顔があまりに可愛くて、思わず笑みが漏れる。

俺を警戒して怪しむその姿にも好感がもてた。


どんな女も俺を見た途端に欲を孕んだ瞳を向けるというのに、この子はちっともそんな瞳をしない。

それ以前に正反対の視線を向けてくるんだ。


ヤバい、この子いいじゃん。

ぜひとも俺の懐に入ってもらおう。

ねぇ? 逃げようとしても無駄だよ。

俺、面白い事が大好きなんだよね。


小動物みたいに焦ってる彼女から、名前を上手く聞き出し、連絡先を交換させた俺はなかなかの策士なんじゃないかと思う。


「瞳依ちゃん、諦めてね。もう逃げられないから」

俺の言葉は風に乗る。

だけど、もう歩道橋を降りきったであろう彼女には届かない。






「何か、いい事でもありましたか?」

元の場所まで戻った俺を見て怪訝そうに眉を寄せたのは快斗。


「ん、そうだね。いい事あった」

「そうですか」

しつこく聞いてこない辺りは快斗のいいところだよね。


「さぁ、行こうか」

本来の目的を果たす為に歩き出す。

確か、この先のフランス料理店で待ち合わせだよね。

今日の遊び相手は誰だったかな。

覚えてない相手に会いに行くために、俺は繁華街をゆっくりと進んだ。

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