第7話
結翔Side
闇に溶けるように遠ざかっていく背中を見つめながら、クククと笑う。
名前を聞き出して、無理矢理とも言われかねない交換方法で電話の番号を交換した。
嫌そうな顔でしぶしぶスマホを取り出した時の彼女が新鮮で面白かった。
俺の周りに群がる女が喉から手が出るほど欲しがる番号なのに、迷惑そうにしてる彼女に好感度が更に上がる。
彼女に近付いたのは本当に気紛れだった。
停車させた車の後部座席から降り、たまたま見上げた歩道橋に彼女の姿を見つけた。
欄干に両手をかけて佇むその姿に、今に飛び降りるんじゃないかと錯覚した。
それほど、彼女の姿が儚く見えたんだ。
いつもなら、気に止めたりしないし、多分放っておいただろう。
他人が死のうが生きようが俺には関係ないしね。
でも、今回だけはやけに気になった。
「ここで、ちょっと待っててよ、
先に歩き出そうとしていた襟足の長い黒髪の男に声をかける。
振り返った男は切れ長の目を少ししかめて、俺を見た。
「どうかしましたか?」
少し神経質なその声に、
「うん、少し気にかかる事があるから」
そう返し、快斗の言葉を待たずに背を向け歩き出す。
「早めに戻ってくださいよ」
背後から聞こえた声に振り返らないまま片手を上げた。
直ぐ側にあった歩道橋の階段を登り、彼女の元へと向かう。
気付かれて逃げられると困るから、静かに音を立てずに進む俺の背中に、快斗の視線が刺さってるのは気にしない事にした。
階段を登り切ると、下から見つけた彼女はまだそこに居て、近付く度にその姿がはっきりと見えてきた。
肩まである濡れ羽色の髪の彼女はわりと背が低くて、それでいてどこか存在を主張するように佇んでいた。
欄干に両手を置いたまま少し身を乗り出している彼女に俺はゆっくりと近づいて行く。
ワクワクした様に気分が高鳴るのはどうしてだろうな。
俺の背後から吹き付けた少し強めの夜風が彼女の横髪が煽り、彼女が片手でその髪を耳元へかけた瞬間に見えた顔にドキッとした。
美人というよりは小動物のように愛らしい美少女の横顔は、どこか気の強そうな印象を与えた。
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