第30話

私は震えた手で電話を鳴らした。

運がいいことにアイツらは私の持ち物は全て返してくれた。

持ち物を返す時、「警察に行けば、動画流しちゃうからね?」という脅しとともに。





震えた足でマンションから離れた…。

もう外は真っ暗で、夕方来た時とは景色はまるで違ってここがどこだか分からない感覚になった。


けど一刻も早くここから離れたかった。

シャツをボタンごと破かれてしまったから、前を止められず。必死にバレないように鞄で隠した。


ある程度離れたところで、私は電話を鳴らす…。

倭とは違い、電話にすぐ出てくれたその人は『…なんだよ…』と凄く面倒くさそうだった。


だけど私はその人に泣きながら伝え続けた。

彼は『…おい?』と、声の色を変えた…。




私は自分がなんて言ったか分からない…。





それでも彼は、かけつけてくれたらしく、肩を荒々しく上下させていつの間にか私の前にいた。



──…私の姿を見て、凄く…見たこともないぐらい怖い顔をすると、自身のパーカーを脱ぎ私に被せてきた。




「……やられたのか?」と、ただ一言…。




ガタガタと体を震わせる私を見て、「…だから縁切れって言ったんだ」と呟いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る