第6話
いつかはおさまるんじゃないか、でも永遠続くかもしれない。退部届け出そうかな…。
そう思って悩む日々が続く中、移動教室で校舎内を歩いていると「原田」と声をかけられる。
そこには元凶になった穂高が立っていた。
「ちょっといい?」と、私を呼び出した倭の友達である穂高…。
顔を縦に振り、廊下の端の人気の少ないところまで来ると、穂高は少しだけ目を細めた。
「話あるんだけど」
「…うん、なに?」
そう呟いた私の声は、いつもより暗くなったような気がする。
「お前さ、もしかして2年の女になにかやられてる?」
──どくん、と、心がなった。
どうしてそれを知ってるの?
この人達は、誰にもバレないように、…してる、のに。
もう声変わりをしているらしい穂高の声は、低かった。
「え、…?」
「前、連絡先聞かれたんだよ」
連絡先聞かれた?
穂高の?
「そいつ、俺に好きだって言ってきて。名前、エリってやつ。同じテニス部だろ?」
すきだ…
エリ…。
エリ先輩…。
私の膝を蹴った先輩の名前だった。
「断ったけど、」
断った…。
「…この前、お前と喋った後。倭のスマホ頼んだ日連絡きて。エリから原田とどういう関係?って」
私とどういう関係…。
倭の幼なじみ…。
だから、友達の幼なじみ…。
エリ…。
呼び捨てする程の仲…。
「そっからしょっちゅう原田のこと聞いてくるし。お前、前と雰囲気違うし。エリとなんかあったかって思って」
「…」
「なんかされてる?足も、この前見た時右だけだったのに、左足も増えてるし」
それは、そのエリ先輩が、無理な運動をさせるから…。膝をついてしまうから…。
エリ先輩がどうしてあんなにも私に突っかかってくるのか分かった気がして。
嫉妬…。
私の顔を見て、「…やっぱりな」と呟いた穂高は、「女はこえーな」と、低くして言う。
「穂高…」
「やめろって言うのは簡単だけど、俺が言ったら酷くなるよな」
「エリ先輩…穂高のこと好きなんだ」
「みたいだな」
「……」
「ま、分かった、何とかするわ」
何とか?
何とかするの?
どうやって?
そう思って、穂高の方を見つめる。「俺のせいで悪かったな」と言った穂高は、私に背を向けて歩き出す。
よく分からないけど、〝何とか〟したらしい穂高によって、その日の部活は、エリ先輩は何も私にしてこなかった。
と言うよりも、凄く喜んでいた。
私は倭に、部活が終わったあとラインを送った。それは穂高の事だった。穂高の連絡先を教えて欲しいと。
『あいつ今日女できたから、あんま聞かねぇ方がいいぞ』と返事が返ってきていた。
その〝女〟がエリ先輩だとすぐに気づいた私は、ベットの上に座りながら、怪我をしている両膝を見つめていた…。
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