第30話

タイヤ⋯を、交換しているらしいその男性をぼんやりと眺めながら、お母さんを待っていた。




ぼんやりと、


何も考えず。





ただ、じっと見つめていた時。





「よぉ」



ふと、左方向から、声がした。



「なんだっけ?湖都だっけ?」



まだ、その声は掠れていた。


その声に聞き覚えのあった私は、ゆっくりと、そっちの方へと顔を向ける。



そこにはさっきまで見ていた男性と同じ作業着を着た、蛍がいて。


今日もマスクをしているらしい蛍の髪は、太陽の下だと本当に透明感が強く。



2mほどの離れた距離にいる彼は、「もう風邪平気なのか?」と、私に近づいてくる。

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