第40話

――――結論から言うと。


企画は大成功した。


でも、それは私が歌を必死に練習したからとか、面白い企画だったからとか、そういう理由ではなく。



企画を始めた初週、コスプレ見たさに視聴してくれる人は多かったが、その人数は一時期低迷した。


yamatoに勝つどころではなく、いつもよりも視聴者数が下がった週すらあった。


しかし、四週目で一気に視聴者数が伸びた。いつも見に来ない一般の層の視聴が増えたのだ。



オリジナル楽曲の良さが口コミで広がったらしい。


ショート動画投稿サイトでもなぜか無断利用されており、【この曲の元ネタ何?】と動画サイト内で話題になったようだ。



普段とは違う層の流入により総合視聴者数は大幅にプラスになり、配信サイトでの順位はぐんぐん伸びた。


夜間の視聴者数はyamatoに抜かれてばかりだったが、月間ランキングではyamatoの上をいき、私としてはいい気分な反面これは私の努力の成果ではないとモヤモヤする部分もあった。




玲美は大笑いしていた。



「うひゃひゃひゃひゃ! あの天才俳優、ほんっと予測できない結果をもたらしてくれるわねぇ!」


「玲美、笑い方に品がなくなってるよ……。」



私のフォロワー数は大幅に増えたし、以前よりも若い層のファンが多くなった。


公開しているプランへの入会数も増えたし、売り上げも上がったので私としては嬉しいことだらけなの、だが。



「……なんか、これって私で勝負した結果じゃないからズルした気分」


「そーお? 元々いたファンは雪の頑張ってる姿がいいって言ってたみたいだけど」


「でも、今回yamatoに勝てたのは琉偉のおかげ」


「人脈も立派な実力じゃない? そもそも、城山琉偉っていう強力な協力者を魅了したのは、雪なんだから」



玲美は自室に置いてあるコーヒーメーカーでコーヒーができるのを待ちながら私を励ましてくれた。



「城山琉偉も雪の力って言うと思うわよ」



……きっとそう言う。聞かなくても分かる。


あいつはきっと、俺は大したことしてない、全部ゆきちゃんが凄いからって笑うんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る