第39話

私は結構激しいロックバンドが好きなので、琉偉から提供されたのは曲調がそういう系のものばかりだった。速すぎず歌いやすいように工夫されていて、こいつマジでこの短期間で私に合わせて作曲したのかよ……と有り難いと同時にドン引きである。


その中に、たった一曲、繊細な雪のようなバラード調の曲があった。


バレないと思ったんだろうか、こんなに雰囲気が違う曲を混ぜて。



その曲は多分、琉偉から私に向けたラブソングだった。



正直これには頭を抱えてしまった。嫌だった、のではない。


玲美と大学帰りのカフェテリアで晩ごはんを食べている最中、イヤホンをしてその曲を聴いてしまった私は、思わずテーブルに突っ伏した。



「どうしたのよ、そんなに酷い曲だった? 私にも聞かせてよ」


「いや……曲はすごくいいんだけど。私弱いんだよね、こういうお前に向けたラブソング作ったぜイェイみたいな……」


「やっだ! 雪意外とそういうのに弱いわけ? 意味分かんない愛に酔ったバンドマンとかにハマりそうで心配だわ。ギター買うお金とか彼女に出してもらっちゃうやつ」



妙にクズバンドマンへの解像度が高い玲美が私に送られてきた音源を聞いて砂を吐くような顔をする。



「何このゲロ甘な歌詞……。聞いてて恥ずかしいわ。知ってる相手だから余計恥ずかしいわ」


「……これは照れる……」


「直球で好きって言われても全然照れないくせにこれは照れるわけ? 分かんない、私分かんないわ雪の趣味」



ぶんぶんと首を横に振る玲美。


どうやら私の趣味は玲美には理解されないものらしい。



ごほんと咳払いして気を取り直した。



これでyamatoに勝ってやる、と。

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