第16話
「ママ、入るよ?」
声をかけながらドアを押し開けた。
いつも母の座るソファーにはその姿はなくて。
「ママ?」
もう一度声をかけながら室内へと入る。
部屋の奥の天蓋付きのベッドがこんもりとなってるのを見つける。
なんだ、お昼寝中?
クスッと笑ってベッドへ歩き出した。
母は少し体が弱い。
元々は心臓が悪くて移植手術はしたんだけど、手術までに心臓をカバーするのに無理をしていた体は上手く回復しなかった
通常の生活には支障はないが酷く疲れやすくて、時々こうやって休むことがある。
だから、母がお昼寝してても不思議には思わない。
小さい頃から見慣れた光景だったから。
ベッドまで近付いて、キシリッと音をたてて母の眠るキングサイズのベッドに膝をついた。
そして、寝息をたてるママは気持ち良さそうに眠ってる。
何となく覗き込んだママの寝顔、目尻にキラリと光る涙を発見した。
「・・・え? 涙」
どんな夢を見ているのだろうか?
ぐっすりと眠る母を起こすのは忍びなかったが、外出の許可が欲しいので、母を起こそうと手を伸ばす。
だけど、その手は母に届くことはなかった。
母の眠る顔の横に散らばる数枚の写真を見つけてしまったから。
裏返されたそれが、とても気になった。
そして、それと同時に胸がざわめいた。
どうしてだか分からないけど、凄くざわめいた。
駄目だよと頭の中で誰が警鐘を鳴らした。
たかが写真を見るだけに・・・ガンガンと煩いぐらいに警鐘が響いた。
それでも、何かに誘われるように伸ばし腕は写真へと向かって。
そして、次の瞬間には裏返ったそれを掴んでいた。
見ちゃダメだと感じた。
だけど、見ずには居られなかったんだ。
これは、きっと運命だった。
母はこんな風に、物を散らかしたまま寝るような人じゃなかったし。
私は眠る母の部屋に踏みいる事なんて普段はしない。
怖々と手に取った写真を仰向けにする。
これでもかってほど、ドキドキした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます