第7話

季節が夏から秋、そして冬に差し掛かる頃にも、私とソウの関係は続いていた。




『リスカ』のライブにも何度も足を運び、ソウの相方のシンさんとも仲良くなった。



まあ、仲良くなったと思っているのはわたしだけかもしれないけど。



その頃、ソウとよく一緒にいる私を邪険に扱ったりはしなかった。




「そういえば、この前のあれどーなった?」



行きつけのスタジオでそうシンに話しかけるソウを振り返る。

けれど、すぐに興味を無くし、目の前の参考書に視線を落とした。



「順調に話は進んでるよ。けど最近は少し注文つけてくることがある」



「注文?どんな?」



「うちのバンドには華がないってさ。女の子を入れたらどうかって。」



「女?どっから探してくんだよ。俺は今のままで充分だっつーの」



「いるだろ。女なら、お前の周りに大勢」



「…はっ。じゃあ、マナにでも歌わせてみるか?歌はともかく、良い声で鳴くぜ?」





それは本当にソウの気まぐれ。



現実になんてなるはずなかったのに。





ふざけて無理矢理歌わされたその日、初めてソウの本気で驚いた顔を見た。



昔から好きだった洋楽のグループの曲を歌う私を見るソウの目は、紛れもなく熱くたぎっていた。




音楽馬鹿か。



私の罵りを見事に全部無視して、

クリスマスライブに私の出演が決まった。

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