第30話

『あ、ごめん達也から電話』


「嫁の帰りが遅いから心配してんでしょー!」


「いいなー私も彼氏ほしいっ!」


マイク越しにそんなことを言う二人を残して部屋を出る


『もしもし』


「俺、今どこ?」


『七美達といつものカラオケだよ』


「そっか。帰り迎え行こうか?」


『いいよ、悪いし』


「じゃあ、バス停まで行く」


『うん、ありがと』


「楽しんでこいよ」


『はーいっ』


電話を切ってスマホをポケットに押し込み


ドリンクコーナーでグラスに氷を入れる


ガチャッ


『っ…』


ドリンクコーナーの前の部屋から出てきた


『…』


弘人の姿


「あれ、お前も来てたんだ」


『…』


「偶然だね、優ちゃん。」


あなたはそうやって


からかうような声で


見下すような目で


「ちょっと話さない?」


『…話さない。』


「いいじゃん、来いよ。」


私の腕を掴んで歩いていく弘人


『離してよっ弘人』


弘人の香水の香りに混じる


お酒の匂い

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