第28話

『ねぇ、達也。』


「ん?」


『達也は、好きじゃない子とキスできる…?』


「は?」


『…』


《俺は好きじゃなくてもキスできるし、付き合ってない子とも寝るよ。》


『…』


「別に、できるんじゃねぇの?」


『…』


「したいと思わねぇからしねぇけど。」


『…そっか。』


帰り道


バス停まで続く、夕暮れの並木道


私と達也の足音が


静かに響く


「なぁ、優。」


『…』


「覚えてる?あの日、俺が言ったこと。」


『…』


「公園で泣いてるお前に、俺が言ったこと。」


『うん…覚えてるよ。』


《俺がずっと、優のそばにいるから》


『…嬉しかったもん…』


「俺はずっと、お前のことが好きだったよ。」


弘人がいなくなった日


あの日


達也がいてくれたから


私は救われた


あれからずっと


達也は


「優。」


『…』


「そろそろ良い加減…」


そんなに切ない顔で


「…俺を見てよ。」


困ったように


笑う

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る