第29話 発信したいけど、目立ちたくない

発信したいという強い思いが僕の中にはある。自分の思いや考え、そして障害やうつ病についてのことを、もっと多くの人に知ってもらいたい。でも、その一方で、目立ちたくないという気持ちも同じくらい強く存在している。


この矛盾した思いに、僕はしばしば悩まされる。発信することで、自分が少しでも誰かの役に立てるのではないかと考える。自分と同じように悩み苦しんでいる人が、僕の言葉や経験を通じて、少しでも救われることがあれば、それはとても素晴らしいことだ。


でも、その過程で自分自身が注目されることには、どうしても抵抗を感じてしまう。注目されることで、批判や否定的な意見に晒されるのではないかという不安がある。自分のことを発信し続けることで、個人的なことが広まり、誰かに見られることで生じるプレッシャーが怖い。


僕は、自分の思いや考えを表現することが好きだ。文章を書くことは、自分自身の心を整理し、他者とコミュニケーションを取る一つの手段だ。特に障害や鬱病について、自分が経験してきたことを正直に書くことで、同じような苦しみを抱えている人たちに少しでも共感してもらえたらと思っている。


けれど、それを発信することで目立ってしまうのは避けたい。目立たずに、ただ静かに自分の思いを伝えたい。自分自身が前面に出るのではなく、文章そのものが読んでくれる人に響けばそれで良い。僕の存在を意識されることなく、僕の言葉だけが伝わることが理想だ。


この矛盾する思いの間で、僕は葛藤している。発信したいという気持ちと、目立ちたくないという気持ち。どちらか一方だけを選ぶことは難しい。だからこそ、僕は発信の仕方についていつも考え続けている。


匿名で発信することは、一つの方法かもしれない。自分の名前や顔を出さずに、自分の思いだけを綴ることで、必要な人に届くようにする。そうすれば、僕自身が注目されることなく、自分の考えを発信できるかもしれない。


それでも、発信すること自体に勇気がいる。自分の経験や感情を言葉にして、他者に見せるという行為は、心の中の一番脆い部分を見せるようなものだ。そこに対してどんな反応が返ってくるかを考えると、不安で押しつぶされそうになることもある。


けれど、僕はやっぱり発信したい。僕が感じてきたこと、経験してきたことを、同じような境遇の人たちに伝えたい。障害や鬱病についての理解を深めてもらうことで、少しでも生きやすい社会になれば、それは大きな一歩だと思う。


だから、これからも自分の思いを発信していきたい。目立つことなく、静かに、自分の言葉で。僕が僕のままで、誰かに届くように。どんなに小さな声でも、それが誰かの心に響くことを信じて、少しずつ言葉を紡いでいこうと思う。


発信することは怖いけれど、それでも僕はその道を選びたい。自分の言葉が、誰かにとっての救いになれるように、これからも書き続けていく。その思いを胸に、僕はまた一歩を踏み出す。

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