第26話 出会いの壁
僕には、恋人がいない。それは、単に出会いがないからというだけではなく、出会いの場があったとしても、その壁を越えるのがとても難しいからだ。恋愛について話すと、「なんでまだ彼女いないの?」とか、「もっと頑張らなきゃ」と言われることがある。そういった心無い言葉が、胸に突き刺さる。
出会いの場がないわけではない。友人が開いてくれる飲み会や、趣味の集まりに参加することもある。けれど、そこで誰かと親しくなるのはとても難しい。話していると、いつも「自分はどんなふうに見られているのだろう」「本当の自分を話しても大丈夫だろうか」という不安が頭をよぎる。
僕は、自分の障害をオープンにしている。なぜなら、隠すことができないし、隠して付き合うことが、相手にとっても自分にとっても良くないと思うからだ。けれど、そのことを話すと、途端に相手の態度が変わることがある。今まで和やかに話していたのに、急に距離を置かれたり、関心を持たれなくなったりする。
「そうなんだ、大変だね」と、表面上は同情的に言われることもあるけれど、その言葉の裏にある距離感を感じ取ってしまう。「この人とは、これ以上深く関わりたくない」という気持ちが、相手の態度や表情に現れる瞬間が、どうしてもわかってしまうのだ。
それが、とても辛い。自分の障害をオープンにすることで、本当に心を許せる人に出会えると思っているのに、それが逆に壁を作ってしまうことが多い。僕は、自分の全てを受け入れてくれる人に出会いたいと思っている。だけど、それがどれほど難しいことなのか、痛感する毎日だ。
「恋人なんてできるはずがない」「諦めた方がいい」と言われたこともある。その言葉は、僕の心に深い傷を残した。恋愛に対して、前向きな気持ちを持てなくなる瞬間がある。誰かに愛されたい、誰かを愛したいと思っても、その気持ちがどこかに押し込められてしまう。
それでも、僕は恋愛を諦めたくない。誰かと心を通わせ、一緒に喜びや悲しみを分かち合いたいと思っている。障害があっても、自分自身を全て受け入れてくれる人に出会いたい。そのために、自分の障害や過去を隠さず、ありのままでいることを大切にしている。
とはいえ、恋愛が思うように進まない現実は、やはり辛い。出会いの場で勇気を出して話しかけても、相手がどこか引いてしまうことがあると、自分がまるで「避けられるべき存在」になったように感じることがある。そんな時、心の中にぽっかりと穴が開いたような寂しさが広がる。
僕は、自分の障害や特徴を理由に、恋愛を諦めたくない。でも、それを理由に避けられる現実を前にすると、「どうして僕だけこんな思いをしなければならないんだろう」と落ち込むこともある。世間が恋愛に求める「普通」という基準に、自分が当てはまらないことを痛感するたび、自己嫌悪に陥る。
それでも、僕は出会いを求め続けたいと思う。どれだけ難しくても、自分を理解し、受け入れてくれる人に出会えることを信じている。今までの経験が、僕を少しずつ強くしてくれたと思うし、傷ついても、それを乗り越えていくことで、自分自身が成長していけると信じたい。
恋愛は難しい。誰にとっても簡単なものではないだろうけれど、僕にとってはそれがさらに高い壁になっている。けれど、その壁を乗り越えた先に、本当に心を通わせることのできる人がいるのなら、その出会いを諦めずに求め続けたい。
これからも、少しずつ自分を磨きながら、出会いを求めていこうと思う。障害を持っていることや、自分の弱さを隠さずに、ありのままの自分でいられる人との出会いを大切にしたい。簡単には見つからないかもしれないけれど、諦めずに歩き続けたい。
僕の人生の中で、心を通わせられる人に出会えることを願いながら、今日もまた一歩を踏み出していこうと思う。その一歩が、いつか素敵な出会いに繋がることを信じて。
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