第5話

「朝の8時だ」



「ほんと?けっこう眠れたみたい…」



「……また、あの夢か?」



「…まぁね」





目を合わせず答えたあたしの頭に、亮太兄の手が触れた。




一瞬、構えるようにびくついたあたしに触れた手は悪夢の中の手と違い、血の通った温かい手だった。





「…カウンセリングを受けた方がいいんじゃないか?毎晩うなされてるだろ?」




またその話……?



何度目かの話題に、ついそう思ってしまう。




あたしは足を体に引き寄せて、そこに顔をうずめた。



だけど、心配させてるのはわかってるから。



迷惑かけてるのもわかってるから。




「…大丈夫。だんだんうなされるのも減ってきたし、病院は行かない」



あたしは根拠もない安心させるセリフを吐いた。

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