第12話

深く、深く…


遠い眠りに落ちてゆく…



…どこかから、誰かが呼んでいる。



声がする方を見ると、遠くに男の人がいた。

二十代後半か…三十代前半くらいだろうか。

なんだか懐かしさを感じる。


だけど誰なのかは、どうしても思い出せない。


私と目が合ったその男の人は、にっこり優しく微笑んだ。

それを見て、なぜか涙が流れた。


何か大事な事を忘れているみたい。

自分の頬を流れる涙の理由が分からない。



ただただ切ない感情だけがとめどもなく生まれ続け、涙は頬をつたい流れていく…そんなおかしな夢……。


……夢?これって夢だよね?



そんな風に気付いたあたりから、意識はゆっくりと現実の世界へと戻ってゆく…。

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