第8話

「トマトさん!!」

 飼い主を見つけて、トマトさんは安心したように囀り始める。

 その籠をクローブがテーブルに置いた。


「放置できないので連れてきました。クローバーの鉢も持ってきました」

 使用人が日当たりのいい場所にクローバーの鉢を置く。もう水分を吸って元気になっている。


「お食事は最初だけお粥にしましょうか? それともシチューなどでしたら食べられそうですか?」

「あ、シチュー大好きなんですけど……あの、カロリー制限食にしてくださいませんか?」


 クローブは耳を疑った。

 この痩せこけた実ノ里には、寧ろ倍量食べて欲しいくらいだ。

「あの……高崎さん。ご自分のBMIご存じですか?

 入院時に体重も測りましたが、15程度しかないんですよ。食べないと……」

「太っちゃダメなんです」


 実ノ里が精神疾患を抱えていることは分かっている。おそらく何かあるのだと判断し、

「分かりました。失礼いたしました。

 それではカロリー制限のシチューを持ってきますね」

 もちろん、カロリー多めのシチューを持ってくるつもりだ。


 実ノ里と話し合うことは多そうだ。

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