2,迂闊にサインをすると後戻りできない

第5話

2,迂闊にサインをすると後戻りできない



 気が付くと、知らない部屋だった。

 白を基調とした内装に、花瓶に活けられた花、絵画。かなり広くて眠っていたベッドもダブルサイズだ。


「あ、気が付きましたか?」

 声をかけてきたのは、見覚えのありすぎる美青年だった。医院から実ノ里を付け回した男だ。

 確か――


「えっと、オブライアンさん……?」

「あ、覚えててくれましたか。ありがとうございます」

 笑顔を浮かべた後、彼は急に真顔になり、


高崎こうさき実ノ里みのりさん、申し訳ございませんでした!」

 深々と頭を下げる。

「炎天下で追い回せば、倒れちゃうことくらい、ちょっと考えれば分かったのに……」


 見れば、【看護助手 クローブ】という刺繍の入ったナース用のワンピースを着ている。

「あ、いえ……。

 あの、病院のかたですか?」


「はい、まだ看護師免許は取っていないので看護助手ですが。

 先生を呼んできますね」

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