第27話

「来たわねー」

「来たな」


 カイナの予言から四日。ガーネットとティーンの二人は、顔を合わせるなりそう言った。 カイナの部屋の前である。カイナが懐いてしまったということで、ティーンもカイナの護衛にまわされたのだ。因に、カイナの部屋は二階にあるが、そのすぐ前の廊下がテラス状になっており、吹き抜けの一階のホールが見渡せる。


 二人は、その廊下から、並んで一階を見下ろしながら話していた。


「『禁忌』には、部下がいるみたいね。奴を含んで、あたしでも勝てそうなのが六つ。ティーンなら勝てそうなのが7つ、それから……」


 と、そこまでは世間話のような口調で話していたガーネットは、急に声のトーンを落とし、

「ティーンより明らかに強いのが一つ」


 『明らかに』の部分を強調し、釘を刺すように言う。


「本当に戦う気?」

「そのつもりだ」


 ティーンの言葉に、ガーネットは嘆息する。因に、スペサルタイトはまだ戻って来ていない。


「まぁ、二、三日は様子見ましょ。向こうが動き出さない限り。

 ……ところで……中にセイズの反応が混じってるの、気づいてる?」


「ああ。セイズも奴らの仲間だ。そうでないと知っている筈のないことを知っていた」

「いつから気づいてたの?」

「呪法院にいた時からだ」

「……よく放っておいたわね……」

 感心したように呟くガーネットに、ティーンは淡々と、


「呪法院での課程を全て終えてから、奴のことを聞き出そうと思っていたが……その前にいなくなったからな」


「ま、取り敢えずは現状維持よ。

 どうしようか? ザトちゃんには報告しとく?」


「一応言っておいた方がいいだろう。どうせ、奴の所に出向くときには伝えなければならない」

「そうね……。

 ザトちゃーん!」

 ガーネットは頷くと、カイナの部屋の扉を開き、ザストゥを呼ぶ。


「誰がザトちゃんだ!」

 まだ諦めていないのか、ザストゥは未だに抗議の声を上げながら出て来た。


「で、何の用だ?」


「近くに『禁忌』が来たみたいだから、報告しとこうと思って♪」

 妙に明るい調子でガーネットが言い放った言葉に、彼は暫し硬直した。



◆◇◆◇◆

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る