30・家庭科で刺繍授業です!
第30話
「皆さん、今日から刺繍を始めてみましょうか」
「えっ?」
先生の放った言葉に固まった。
「廊下に刺繍作品を展示してあるの知ってますね。皆さんは基本的な事から始めてもらいます」
「………」
嬉しい!嬉しすぎる!
刺繍を教えてもらえるなんて思っても見なかったから。
「刺繍の糸、木枠、布…全て揃ってますね?」
机の上に置かれてる物…私が買ったのと同じ。
ドキドキしながら先生の話を聞いて木枠に布をセットしていく。
糸を針に通して私は昨日携帯で見た家紋を思い出す。
「今日は初心者の皆さんなので丸を縫っていきましょう」
「はいっ」
ひと針ひと針気持ちを込めて丸を縫っていく。
「霞、上手い」
「えっ?ありがとう」
友人に褒められて嬉しくなった。勿論、友人も上手かったから友人も褒めた。
「
三角は、直線がズレる…。
記憶では、チクチク完璧に縫ってる私が瞼の裏に映るけど現実はチグハグになる直線。
「刺繍は、慣れが大事です。小さい物からコツコツと」
慣れが…大事なのは分かってるけど瞼の裏に映る自分に嫉妬する。
「もっと上手くならなくちゃ」
「霞、気合い入ってるね〜」
「うん!刺繍で紅露の家紋縫ろうって決めてるの」
「ふぇ〜。頑張れ!霞。応援してるよ」
「ありがとう」
私の目標は紅露の家紋を、刺繍で縫う事。
きっと上手く出来る!
瞼の裏に映る私っ!宣戦布告よ!
きっと私はやり遂げて見せるんだから!
「…み!霞!」
「えっ?はっ!!」
名前を呼ばれて意識が戻った。
「あれっ?ううんっ?私……」
「大丈夫か?霞。ボッーとして」
あれっ?私いつの間にお弁当広げて…?んっ?
「家庭科終わってから燃えてたもんな。今尽きた?」
「まだ燃えてる。やる敵が増えたから」
お弁当を食べ終えて片付けていたら後ろから抱きしめられる。
「あっ…」
「家庭科に霞の心を持ってかれるのは反対だ。お前の心は俺で埋め尽くしてればいいんだよ」
「…うっ、うん…」
とっくに紅露に心を埋め尽くされている。
まだまだ会って間もないけど心は惹かれてるんだよ。
「で?霞…リリナーアの心を奪い取ったのは刺繍か?」
「うん!刺繍の授業が始まったの。今日は丸と三角なんだけどね」
「刺繍の事なら俺は半分負けで半分勝ちだな」
「半分?」
「あぁっ。半分と言わず全部が俺のだけど、刺繍にそこは譲ってやるよ」
譲るって…。
紅露は刺繍にヤキモチ妬いてるの…まさかね…。
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